以下、建設業の許可制度について、わかりやすく説明します。
制度の内容や各業種の具体例についても丁寧に解説していきます。
1. 建設業の許可制度とは?
建設業とは、建物や道路、橋などの「建設工事」を仕事として行うことです。建設工事を行うには「許可」が必要で、国土交通大臣か都道府県知事からの許可がないと多くの工事はできません。この制度は、工事の品質を守り、安全に行うために設けられています。
2. 許可が必要な理由
建設業の許可は、工事を行う会社や個人が「信頼できるか」を確認するための制度です。建設業を行う会社が「技術力があるか」「資金がしっかりしているか」など、さまざまな基準を満たしていないと許可を受けることができません。これにより、工事を依頼する人も、安心して建設業者に依頼できるようになっています。
3. 許可がいらない「軽微な工事」とは?
軽微な工事とは、規模が小さく、法律上特に許可がいらない工事のことです。ただし、すべての工事が軽微な工事になるわけではなく、金額や面積によって判断されます。
- 建築一式工事の場合
1件あたりの請負金額が1,500万円未満の工事や、延べ面積が150㎡未満の木造住宅の工事は許可がいりません。 - その他の工事の場合
1件あたりの請負金額が500万円未満の工事は許可が不要です。例えば、個人の家の壁を塗り直すといった規模の小さい工事がこれに当たります。 - 「請負金額」の考え方
請負金額は、消費税や地方消費税も含まれた金額で判断します。また、注文者が材料を提供する場合、その材料の市場価格や運送費なども含めて請負金額を決めます。複数の契約に分けて工事を行う場合でも、それが1つの目的の工事であれば、金額を合計して判断します。
4. 許可の必要な「29種類の工事」
建設業の許可は、工事の内容によって29種類に分かれています。それぞれの工事で「許可が必要な業種」が異なるため、以下の表でわかりやすくまとめました。
工事の種類 | 具体的な内容 | 例 |
---|---|---|
土木工事業 | 土地に関わる大規模な工事 | 道路や橋の建設、河川工事 |
建築工事業 | 建物全体を建てる工事 | ビルや住宅の新築・増改築 |
大工工事業 | 木材を使って建物を作る工事 | 木造建物の壁や床の造作工事 |
左官工事業 | 壁や床の表面を仕上げる工事 | モルタルを塗ったり、吹き付けたりする |
とび・土工・コンクリート工事業 | 重いものを運んだり、基礎を作る工事 | 足場の設置、地盤の掘削、くい打ち |
屋根工事業 | 屋根に瓦や金属板を貼る工事 | 瓦葺きやスレート屋根の設置 |
電気工事業 | 電気設備を設置する工事 | 電柱の工事や配線工事 |
管工事業 | 水道やエアコンなどの管を取り付ける工事 | 給排水の管や冷暖房機の配管 |
塗装工事業 | 壁や床に色を塗る工事 | ビルの壁の塗装、道路のライン引き |
造園工事業 | 庭園や公園を整備する工事 | 公園の遊具設置や樹木の植栽 |
解体工事業 | 古い建物を取り壊す工事 | 建物の解体 |
これ以外にもさまざまな種類があります。例えば、道路を舗装する「舗装工事業」や、消防施設を設置する「消防施設工事業」などです。建設業者は、この29種類のうち、自分が行う工事の内容に合った許可を取得する必要があります。
5. 一式工事と専門工事の違い
- 一式工事:建物全体を建てたり、大規模な構造物を作る工事で、複数の専門工事を統括して行います。たとえば、ビルの建設で、土台作り、大工工事、屋根工事をまとめて行う場合などです。
- 専門工事:特定の作業のみを行う工事です。たとえば、大工工事や塗装工事など単独で実施する工事が含まれます。
一式工事の許可を持つ建設業者は、全体の工事を一括して請け負うことができますが、たとえば「大工工事だけ」「電気工事だけ」といった専門工事を行う場合、その専門工事ごとの許可が必要です。
6. 許可がいらない工事の例
建設業の許可が不要な工事もあります。次のような作業は、建設業には該当しないとされています。
- 船や飛行機の内装や設備の工事:建設工事ではないため、許可は不要です。
- 建物や設備の保守点検や修理:たとえば、エアコンの点検や故障修理といった作業も許可は不要です。
- 道のメンテナンス作業:草刈りや雪かきなどの維持管理も建設工事には含まれません。
また、建設業者が自社の建物の工事を行う「自社物件工事」は、工事の完成を請け負うものではないため、許可なしで行えますが、この工事を「利益として計上」することはできません。
7. 特別な登録が必要な工事
建設業の許可が不要でも、特定の工事には別途「登録」が必要です。代表的なものに「浄化槽工事」と「解体工事」があります。
- 浄化槽工事
浄化槽工事を行う場合、「浄化槽法」に基づいて、浄化槽工事業者として登録が必要です。この登録は、建設業許可とは別に行わなければなりません。 - 解体工事
古い建物を取り壊して、資材を再利用する「解体工事」には、「建設資材の再資源化等に関する法律」に基づいて解体工事業者としての登録が必要です。
まとめ
建設業の許可制度は、工事を安全かつ確実に行うための仕組みで、29種類の工事ごとに許可を取得しなければなりません。また、すべての工事に許可が必要なわけではなく、軽微な工事や特定の例外もあります。この制度を守ることで、建設工事の質が保たれ、依頼する人も安心して工事を任せられるようになります。